A Tale of Terror
『埋葬されたはずの死者』(Dead...and Buried?)

著者:Brian M. Sammons
日本語翻訳:TRAM


一人の探索者のもとに、年下の従兄弟ロナルドがつい最近亡くなったという悲しむべき知らせの電話がかかってくる。どうやらロナルドは交通事故を起こしてしまったらしい。深夜車の運転を誤り、木に衝突したのだ。探索者の叔母は、友人たちとともにメイヤーズ葬儀場での葬儀に出席するよう言ってくる。
 葬儀は惨澹たるものだ。すすり泣きやむせび泣き、ロナルドの母親のややヒステリックがかった声が聞こえてくる。葬儀が始まる前に葬儀場の正面玄関で、長いトレンチコートを着て黒いサングラスをかけた男がつまみ出されて一騒動が起こる。悪いことは続くもので、葬儀では棺が閉じられたまま行われるようだ――事故によりロナルドの顔が酷く損傷を受けているためである。
 追悼の言葉が一通り終わると、葬儀の出席者たちは閉じられた棺の前に並び、最後の別れの言葉を述べている。悲しみ疲れ果てた探索者の叔母が棺に近づいた時、彼女の啜り泣きは頂点に達し崩れ落ちるように棺にしがみ付く。二人の男性が何とかして彼女を引き離そうとした時、棺が倒れ一同は騒然となる。というのも落ちた衝撃で棺の蓋が開いたそこには煉瓦ブロックが入っているだけで、遺体が安置されていなかったからだ。叔母は気を失いかけ、参列者たちは悲鳴を上げる。探索者たちはロナルドの遺体に何が起こったのか解明せねばならない。

今後の展開

  1. メイヤーズ老人は強欲な人間で、金を稼ぐ新しい手段を発見した。彼は棺を閉じた葬儀を(何故棺が閉じられているのか根拠の無い言い訳をしばしばしながら)可能な限り行う。彼は棺には遺体を埋葬せずに煉瓦や石などの重りを棺の中に入れるのだ。そうやって彼は四つの棺を繰り返し再利用している。しかし、真の収入源はその遺体にある。最近彼は地元の大学へ医学実験用に遺体の売買を始め出した。実際、葬儀場にて出くわした不審な男は大学側の遺体引き受け責任者で、時間を間違えて早くに来てしまったのである。
     もし探索者たちが事件の真相に近づいているとメイヤーズが感じれば、彼はごろつきを金で雇って探索者たちを脅かさせて追い払おうとするだろう。事件の真相が明るみに出れば、メイヤーズ老人は己が犯した罪によって人々に糾弾されるよりはと首を吊って自殺するだろう。
  2. メイヤーズは暗黒の技法を修めた魔術師であり、自分の運営する共同墓地に住む一組の食屍鬼(グール)との協力関係を築いた。その見返りとして彼は食屍鬼に新鮮な死体を提供した。彼は若きロナルドの遺体も提供している。探索者たちが身の回りを嗅ぎ出し始めれば、彼は一行に8体の食屍鬼をけしかける。それが失敗すれば、遺体安置所に眠る未埋葬の死体を使って3体のゾンビを創造するだろう。全てが失敗に終われば、探索者たちを抹殺するため何らかの存在を召喚しようと試みるか、あるいは単純に逃げ出そうとするかもしれない。
  3. 若きロナルドは様々な極めて違法なビジネスに手を出すようになっていた。ここ二ヶ月ほどは海外の麻薬密売組織の下でモルヒネの運び屋をしている。
     (同じ仕事をしていた)彼の友人が配達がほんの少し遅れたというだけでファミリーによって消されたため、ロナルドは抜け出すことを考え始めた。そこで彼は自分の死を偽装しようと計画した。彼は地元の検死官に偽の死亡報告書を書くよう買収し、マイヤーズ老人にも空の棺を埋葬するように金を支払った。実のところ、用心深いマイヤーズ老人に葬儀の際につまみ出されたのは、変装したロナルド本人だったのである。
     探索者たちが彼の秘密を公にしようとすれば、ロナルドは一行の前に現れて助けを求めるだろう。彼は母親と共に可能な限り速やかにこの町を離れようとする。これは問題の解決策ではあるが、密売組織は棺が空であったことを聞き及びロナルドを探し始めている。

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1997 Brian M. Sammons.


訳者ノート:「A Tale of Terror」シリーズはミニシナリオのアイデアとその(三種類の)シナリオ展開とを併せて様々な著者が提示するシリーズです。今回のシナリオにおけるクトゥルフ的な?展開は2番のみですが、2番と3番のシナリオアイデアをうまく組み合わせると面白い(ロナルドとメイヤーズ双方の思惑が絡みあうような)シナリオができるかもしれません。食屍鬼やゾンビのデータについてはルールブックを参照してください(TRAM)


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