ミステリアス・マニュスクリプト
『Von
denen Verdammten(永劫に呪われし者たち)』
著者:John H. Crowe, III
日本語翻訳:TRAM
原版
カザユ・ハインツ・フォーゲル著。AD1700年。ドイツ語。
SAN喪失:−1D3/−1D6
クトゥルフ神話:+5%
呪文倍率:×3
学習時間:45週間
呪文:”シアエガとの接触”(本記事参照)など含む幾つかの呪文。その他の呪文を何にするかはキーパーが適宜決めること。ブレンダル版
エディス・ブレンダル著。AD1907年。ドイツ語。
SAN喪失:−1D2/−1D6
クトゥルフ神話:+4%
呪文倍率:×2
学習時間:32週間
呪文:なし「Von denen Verdammten」はエディス・ブレンダルが1907年に記憶を頼りに書いた本である。ブレンダルはカザユ・ハインツ・フォーゲルが著した無題の原稿に触れる機会があったドイツ人女学生だ。彼女は驚異的な記憶力を有効に使い、その原稿を読破した後に複製している。題名の英訳は「Of the Damned, or: A Treatise on the Hideous Cults of Old(永劫に呪われし者たち。または、忌まわしい古き教団に関する論文)」。
原書はカザユ・ハインツ・フォーゲル(ドイツ人。アメリカに移住するが、この冒涜的な書を執筆するため後に故郷に帰っている)によって1700年頃執筆された。フォーゲルは本書を執筆直後に姿を消しており、その後の彼の運命は誰も知らない。だが、彼は獄中で死亡したとか、ローマカトリック教会に消されたのだとか囁かれている。彼の原稿はすぐさま差し押さえられ、現在では2冊の写本だけが残存していることが知られている。そのどちらもがドイツの図書館に厳重に保管されており、閲覧は厳密にコントロールされている。
1907年に若きエディス・ブレンダルの努力が無かったら、今頃は歴史の中に埋もれていただろう。彼女は原稿の複写が完了するとそれをすぐさま出版した。この新版には、ブレンダル自身が原書を研究したその研究結果も記されている。何処の出版社も「Von denen Verdammten」に関わることに尻込みしたため、ブレンダルは自費出版することにした。書店の在庫はすぐさま売り切れ、公立図書館所蔵の本は姿を消した。これらの本が何処に行ったのかは誰も知らない(未だ書店にも個人コレクションにも現れていない)。
エディス・ブレンダルの運命はさらに謎に包まれている。彼女は生まれ故郷のハンブルグ(アルトナ)からベルリンへ、そしてボンへと転居している。そして1910年3月27日に彼女は失踪し、その8日後、ライン川に水死体で発見されている。
タイトルで仄めかしている通り、「Von denen Verdammten」は太古の教団について焦点を当てている。その教団はドイツのフライハウスガルテン村にあり、殆ど知られていない神性の存在「待ち受ける闇」「洞窟の王」シアエガを信奉している。昔は(そして恐らくは19世紀中頃や最近も)、信者たちはデュンケルフューゲル(闇の丘)と呼ばれる丘の近くで血の生け贄を捧げていた。伝説によれば遥か昔その地には闇の神を祭る石の神殿があったといわれているが、それが真実だとしてもその神殿の痕跡は現在は何処にも無い。ブレンダルは(「Von denen Verdammten」の中に)研究に関するメモを残している。そのメモによれば石の神殿については1850年以降一切言及がされていないようで、逆に考えればそれ以前は廃虚か何らかの名残がまだそこに残っていたということを示しているとも取れる。また彼女は昔に闇の儀式が<<待ち受ける闇と彼らが呼んでいた暗く隠された場所にて>>行われていたことを記している。この記述は破壊された神殿について言及していると解釈している読者もいる。(また「Liyuhh」(ルルイエ異本を分析し改作した貴重なルルイエ異本ドイツ語版)でもシアエガや破壊された神殿について言及されている)
「Von denen Verdammten」の評判はあまり良くない。ブレンダルのその境遇からも、敢えて手を出そうとする者は殆どいないためでもある。
抜 粋
Irgendwo, auf einem einsamen Plats
Wo sie niemals bleiben wollten
Irgendwann, in diesen leeren Raum
Werden sie einen Weg finden
Das Pfad im Dunkeln――原版
どこか孤独な地で
決して留まりたいとは思わぬ場所で
いつか虚ろな空間で
お前は道を見つける
暗闇への道を
闇、それが我が名――ブレンダル版
新呪文
シアエガとの接触(Contact CYÄEGHA)
「Von denen Verdammten」や「Liyuhh」のみでしか発見の可能性の無い貴重な呪文である。この呪文の使用には2種類の方法がある。ドイツの辺鄙なフライハウスガルテン村近くのデュンケルフューゲル(闇の丘)にて満月の夜を過ごせば、誰かの夢を通して神性の存在との接触は成されるかもしれない(シアエガが直接やってくる可能性もあるが)。さもなくば、この呪文は満月の夜洞窟の奥深くにて一人の人間を生け贄に捧げることを必要とする。生け贄を捧げ、シアエガへの懇願が成されれば、シアエガは信者に何らかのビジョンを通して接触してくるかもしれない。
呪文がどのような方法で行われたかに関わらず、呪文の使用者は1ポイントのPOWと1D6の正気度を消費する。呪文の成功の確率は幸運ロールの値の半分と同じである(但しPOWの喪失後の値で計算すること)。呪文に成功すれば、接触は数時間以内に起こる(夜明け前までに必ず起こる)。
呪文の使用に関する注意点は殆ど無いようだ。シアエガは信者のことを全く気にかけてはおらず、己が解き放たれるその日を待っているだけである。崇拝はシアエガに心惹かれてというよりも、恐怖の存在に対する畏怖の念によってという面が多分にあるだろう。参考文献
Bertin, Eddy C. "Darkness, My Name Is." The Disiples of Cthulhu. New York: DAW Books, Inc., 1976.1997 John H. Crowe, III.
訳者ノート:「ミステリアス・マニュスクリプト」はクトゥルフの呼び声の世界にマッチした様々な架空の書物を紹介するシリーズで、毎号様々な著者が執筆しています。
ルルイエ異本のドイツ語版「Liyuhh」やブレンダルが書いた「Von denen Verdammten」に関してはカタカナ表記を避けて、原文のままとしました。ちなみに「Liyuhh」はサプリメント「Keeper's Compedium」の28頁に説明が少しだけ載っています。シアエガについてはルールブック123頁を参照ください。(TRAM)