警察の力(Long Arm of the Law)
The FEDS
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著者:John H. Crowe, III
日本語翻訳:TRAM


連邦警察官への殺害、襲撃、抵抗行為
1984年5月18日、連邦警察官へ犯罪行為を行った罪人への対処を考慮に入れて、刑事法が改正された。これにより職務遂行中の連邦警察官への襲撃および殺害は連邦犯罪となった。「連邦警察官」とは、マーシャルサービス、F.B.I.捜査官、税関職員、沿岸警備隊員、郵便検査官、I.N.S.およびI.R.S.職員、連邦刑務所の矯正懲罰官*1を指している。言い換えれば後述の『連邦エージェントの管轄範囲』に記載されている組織の人員は皆この定義に含まれている。更に言えば、職務遂行のために連邦警察官に対して危害を加えたり殺害したりすれば、それは連邦犯罪となる。

*1…原語は「corrections and penal officers」。直訳です。

 またこの法律は、職務に従事している連邦警察官に対する激しい抵抗、妨害、脅迫、干渉もまた連邦犯罪とした。だがこの条項の違反に対する処罰は、せいぜい罰金$5,000か(および)長くても3年程度の懲役刑だった。また、仮に凶悪な武器で連邦警察官が怪我をしたとしても、罰金の最高額は$10,000であり、懲役の最高期間も10年だった。

国民火器制限法(1934年)*2
1934年の国民火器制限法は、合衆国国民に対する大規模な火器の所持制限としては恐らく初めての法律である。条文は、時に国家を悩ませたいわゆる「ギャング武器」を制限するために書かれている。禁止となった武器の種類の一つには、自動火器がある。自動火器を合法的に所有することは現在でも可能だが、その管理には(今も昔も)一般市民には手におえないほどの多大な手間とコストがかかる。これにより、自動火器は厳密に言うと政府(法執行機関や軍隊)、一部の民間セキュリティーサービス、僅かばかりの個人コレクターや好事家にのみ利用可能な武器となった。

*2…原語は「The National Firearms Act」。

 この法律は自動火器を禁止だけには留まらない。いわゆる「先端を切り詰めた」武器も禁止している。この法律が危惧しているのは、銃身が短かったり先端を切り詰めたライフルやショットガンが犯罪目的で使用されることである。そういった武器を法を遵守する市民に売って繁盛していた業界だったが、この法律によりそういった武器を所有も製造も、販売することも禁止された。銃身の短いライフルやショットガンを具体的に定義すれば、それは銃身が18インチ*3以下のものを指す。

*3…約46センチ

 サイレンサー(消音器)もまたこの法律により禁止された。一般市民による合法的使用法は無いとみなされ、法により規制される武器およびアクセサリーのリストに加えられることとなった。

 国民火器制限法が違法と定めた最後の点としては、火器のシリアルナンバーや認識票の除去および破壊行為である。これによりシリアルナンバーの無い武器の所持は違法となった。適切なシリアルナンバーや認識票の付いていないどの火器も少なくとも禁制品とみなされ、代償無く没収されることとなった。認識票の除去やシリアルナンバーのない銃器の所持で有罪となった場合は、罰金最高$2,000か(および)禁固最高5年が科された。

 国民火器制限法は1934年7月に施行された。施行されるまではこの法律によって禁止された全物品は完全に合法だった。自動火器は銃砲店で購入したり注文することもできたし、銃身を切り詰めることも別段珍しくはなかった。

 サイレンサーはまだ未完成な機器で、一般的ではなかった。

大統領命令
ショットガンプラグ*4
連射可能なショットガンが現れたことで、ハンターの手により渡り鳥が壊滅的被害を受けるという問題が起こってきた。その結果1937年8月3日に大統領宣言によって鳥の狩猟に関する厳しいガイドラインが制定された。狩猟に許可されたのは10ゲージ以下のショットガンだけだった。連射ショットガン(ポンプアクション、レバーアクション、セミオートマチック)のマガジンの弾数は3発以下に制限された(この数にはチェンバー内の弾も含まれている)。金属製および木製のショットガンプラグの使用は許可されていた。マガジンのサイズを実際に縮小するというよりも、許可されたカートリッジ数以上の装填を防ぐ目的だった。1937年以降に生産されたショットガンは一般的にプラグと一緒に販売されたが、別々にパッケージングされていた。プラグを取り付けたり取り外すのは特に難しいことではなかった。この宣言では10ゲージ以上の口径のショットガンを禁止している訳ではないことに注意すること。それらを使用して鳥を狩ることを違法としたに過ぎないのである。とはいえ、この命令により元々規模の小さかった8ゲージ以上のショットガン市場は大打撃を受けた。

*4…通常5〜8発程度のショットシェルが収容できるチュ−ブ式マガジンに2発までしか入らないように制限するストッパ−のこと。単純な棒状のもので、マガジン・スプリングの中に入れて使用します。現代ではプラスチック製が主流。

連邦エージェントの管轄範囲
連邦の法執行機関はそれぞれ異なる業務に携わっているが、時にその管轄範囲が交差することもある。

マーシャルサービス
初期においてはマーシャルサービスは連邦法執行機関の一兵士といった位置づけで、その仕事も国勢調査の遂行や連邦刑務所の運営、囚人輸送といったルーチンワークのみだった。だが20世紀における彼らの仕事はそれだけではなく、政府証人の保護や連邦判事や連邦の建造物のセキュリティ問題を扱っている。

国税局(I.R.S.)
I.R.S.の主要職務は税に関する不正を抑えることである。

財務省秘密検察局(シークレットサービス)
両大戦間の時期には、シークレットサービスはある特定の職務を委ねられていた。重要職務の一つは、南北戦争終結後以来の大問題である偽造通貨の摘発である。しかし他の政府機関の仕事を任されることも多々あった。例えばティーポッドドームスキャンダル*5の調査や、クー・クラックス・クランの活動調査、米西戦争および第一次世界大戦期間中の防諜活動などがそれだ。1901年のマッキンレー大統領暗殺以後、シークレットサービスは大統領警護も任され、後には政府高官の警護も任されるようになった。

*5…ティーポッドとはワイオミング州にある連邦政府所有の石油埋蔵地の名称で、この採掘権をめぐって内務長官の汚職が発覚し巻き起こった大政治スキャンダルを指す。

入国帰化局(I.N.S.)
合衆国への非市民の入国を管理するI.N.S.は不法入国者の逮捕および国外追放を任されていた。また、合衆国へ入国を試みたことのある外人(特に犯罪記録のある者)の正確な記録を取る仕事にも従事していた。

国境警備隊
I.N.S.の一部門である国境警備隊は、国境を越えての入国の管理や、密輸業者や不法入国者の取り締まりを行っていた。国の長い国境や海岸線、莫大な数の港や飛行場を考慮に入れればその職務は途方も無いものである。

連邦捜査局(F.B.I.)
この組織は銀行強盗や誘拐から合衆国内で活動する外国によるスパイ行為まで連邦法の過度の違反に関する捜査を行っている。

関税局
関税を徴収するのが主要な業務であり、密輸入やそれに関連する不正行為を取り締まるのも関税局である。I.N.S.のような司法省の組織と共同で活動することも珍しくない。

酒タバコ火器局(A.T.F.)
両大戦間の期間はこの組織はI.R.S.の一部であり、A.T.F.は「リベニュアーズ*6」の愛称で呼ばれていた。というのも禁酒法を支える各種法律の施行をA.T.F.が行っていたからだ。1933年の禁酒法廃止以降は、酒税徴収部隊として知られるA.T.F.はアルコール飲料に関する税法の施行に従事した。第二次大戦以降はより大きな役割を担うことになり、最初にタバコ税に関して、そして後には火器及び爆発物に関しても扱うようになっていった。

*6…原語は「Revenuers」。辞書によると「財務省係官、特に密貿易や密造酒の監視官」を指す俗称のようです。

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1995 John H. Crowe, III.


訳者ノート:「警察の力」番外編?の「The FEDS」も翻訳が終了し、これでやっとまとめて読めるような形になりました。今回も一部名称などに直訳や意訳した点がありますが、ご了承ください。(TRAM)


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